AGVとAMRのバッテリーについて
AGVとAMRはバッテリーで動きます。車両のモーターやセンサー、システムを駆動するために欠かせないものであり、稼働効率や保守性、安全性を左右する重要な部品です。バッテリーの選択で全体のパフォーマンスや総所有コストも変わるので、その種類や特性を知ることが重要です。
AGVとAMR向けバッテリーの種類と特性
AGVとAMR向けのバッテリーにはいくつか種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。ここでは、3つのバッテリーについて解説します。
LFP
LFPはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いたリチウムイオン二次電池です。熱問題に対する耐性があり、高温環境でも熱暴走リスクが低く安全です。また、サイクル寿命が長くコストパフォーマンスが良く、さまざまなロボットに適用できます。また、ほとんどメンテナンスも必要ありません。
一方、初期コストが他のバッテリーと比べて高くなり、NMCよりも重く、エネルギー密度が低い特性があります。
NMC
NMCバッテリーは、ニッケル、マンガン、コバルトを材料とした三元系リチウムイオン電池のことです。軽量で小型なので最小限の重量・コンパクトサイズのロボットに適しています。
一方、NMCバッテリーはエネルギー密度が高くコバルトが含まれていることから他のバッテリーと比べて熱暴走のリスクが高く、安全性に不安があります。
鉛蓄電池
従来から使用されているバッテリーで、初期コストが低く従来のシステムと互換性があります。
一方、重量が重くサイクル寿命が短いこと、充電に時間がかかり定期的なメンテナンスが必要になります。
スペックと選び方のポイント
バッテリーは電圧やサイズ、重量など使用するAGV/AMRに適したものを選ぶ必要があります。ここでは、バッテリーのスペック概要と共に、バッテリー選びのポイントを紹介します。
電圧・容量(パワーの基準)
バッテリーには、様々な電圧があります。
- 24V
- 36V
- 48V
- 72V
主流となっているのは24Vまたは48Vとなっていますが、AGV、AMRの設計に応じて選ぶ必要があります。
容量はAhまたはWhで表され、再充電まで利用できる電力と時間の積です。使用するAGV/AMRの種類や搭載重量、稼働時間などによって選択します。
エネルギー密度とサイズ・重量
エネルギー密度は、単位重量当たりのエネルギーを示しています。エネルギー密度が高くなれば同じサイズでも長く稼働することができます。同じ稼働時間でしたらバッテリー自体を小型軽量に出来ます。バッテリーを小型・軽量化することでスペース効率が優先される用途や小型のAGVにも使用できます。
充電・放電性能
急速充電に対応していれば、短時間の充電で使用できるようになるためAGVのダウンタイムを削減することができます。バッテリーの充放電頻度が高いため高出力が必要となるAGV/AMRの運用は、エネルギーを効率よく放出しなければ寿命が短くなってしまいます。高出力設計のバッテリーは重量物搬送に対応できます。
サイクル寿命と信頼性
サイクル寿命が長ければ、長期間使用できる回復力・耐久性があることを意味しています。交換する回数が少ないため、長期的に見るとコストを抑えられるメリットがあります。
LFPは2,000~4,000サイクル、NMCは1,000~2,000サイクル、鉛は500サイクル程度であることを考えると、LFPは鉛バッテリーより4~5倍以上長持ちします。多頻度で充放電をする場合は、長いサイクル寿命を持つ LFPやLTO(急速充放電可能なチタン酸リチウムイオン電池)が有利です。
セーフティ・BMS(管理機能)
バッテリーマネジメントシステムであるBMSは、バッテリーの状態を監視・制御する管理機能です。BMSには過充電保護や過放電保護、過熱保護、過電流保護機能があり、異常が発生したときには自動で動作を停止させます。BMSはバッテリーの安全性や寿命を高める役割もあります。
また、Wi-Fiなどの無線通信によりバッテリーの残量可視化や遠隔監視もできるようになっていて、複数のAGV/AMRをリアルタイムでチェックすることができるため稼働効率の向上や予知保全に繋がります。
運用環境適応性
バッテリーの動作温度範囲や、防水・防塵性能なども重要です。メーカーが推奨する運用環境で使うことが大切ですから、冷蔵倉庫や高温工場でも問題なく使えるか、AGV/AMRの使用環境に応じて選択するようにしましょう。バッテリーの中では、LFPが高温環境でも安定した性能を発揮できます。
適合規格と導入後支援
バッテリーには様々な認証、安全基準があります。
- UN38.3
- IEC/EN 62133
- JIS D6802
- UL、 CEあるいは CB 規格
また、不具合が出た時に備えてメーカーのサポートや診断体制についても確認しておくこと大切です。
保守・安全性・管理のポイント
バッテリーを長く安定して使用するために、バッテリー管理システム(BMS)を用いてリアルタイムで監視し、過充電や過電流などバッテリーへのダメージを防ぎましょう。また、異常が起こったときはすぐに停止する、自動で状態を診断できるのもBMSの役割です。
メンテナンスが増えると手間がかかり、停止させるたびのダウンタイムが発生で生産性も低下します。長寿命設計であること、簡単に交換できることもバッテリーを選ぶときの重要検討項目です。産業現場では安全対策も欠かせません。発熱や誤作動防止の機能もチェックしましょう。
AGV/AMRバッテリーは環境や目的に合ったものを選ぶことが大切
AGV/AMRバッテリーには鉛、LFP、NMCなどのタイプがあり、それぞれ電圧や容量、放電能力・サイクル寿命などが異なるので使用目的や環境に応じたものを選ぶ必要があります。省スペース・高出力化などが求められるバッテリー技術をの選択が物流現場変革の鍵です。
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岡谷システム株式会社

引用元:岡谷システム公式HP
(https://www.okaya-system.co.jp/)
製造業の課題解決に尽力する岡谷鋼機株式会社のグループ会社として、「工場内搬送自動化」の提案からシステム構築までを請け負う岡谷システム株式会社。
グループ会社の知見を活かし、搬送自動化に関わる機器の販売から工場導線に合わせたシステム開発までを一貫して提案しています。工場の導線に合わせた機器の選定・システム構築を通して、企業の業務効率化・省人化に貢献しています。
